第1回 1984年 授賞語
オシンドローム
ジェーン・コンドン さん(雑誌『タイム』フリー記者)超人気番組だったNHKの連続テレビ小説『おしん』に因んだ新語。凄まじい苦労の連続を必死に耐え、それでも明るさを失わず他人に優しい主人公「おしん」の姿は、戦後を働き抜き、豊かさを手に入れた日本人の心情に“良質の日本人”像として共感の嵐を巻き起こした。その状況を、全国民の感情が同一にシンドローム化しているとして、『タイム』誌上で「おしんドローム」と表現。
鈴虫発言
中曽根 康弘 さん(内閣総理大臣)1983(昭和58)年、ロッキード事件の田中角栄元首相に実刑判決が下され、同年暮れの総選挙は、政治倫理問題が最大の争点となっていく。この状況を揶揄したのが中曽根首相。「倫理、リンリ」とまるで鈴虫が鳴いているようだと切り返した。
スキゾ・パラノ
浅田 彰 さん(京都大学 助手)ニューアカデミズムの旗手といわれた浅田が、人間の特質を、スキゾ人間とパラノ人間とに分類した。スキゾ人間とはいろいろなことに興味をもち、ひとつのことにこだわらない人。パラノ人間はひとつのことに熱中して、ほかのことは全く考えない人。
特殊浴場
イルハン・オウス さん(トルコ大使館参事官)今でいう「ソープランド」には長いこと「トルコ風呂」という俗称があった。トルコからの留学生がこれに異議を唱え、トルコの名前を消すことに努力。「特殊浴場」などの名前が提案された。
(まるきん)、(まるび)
渡辺 和博 さん(イラストレーター)渡辺和博は著書『金魂巻』で、現代の代表的職業31種に属する人々のライフスタイル、服装、行動などを、金持ちと貧乏人の両極端に分けて解説した。それを、(まるきん)、(まるび)とネーミングしたところが秀逸。著書はベストセラーになり、この言葉もマスメディアだけでなく、日常会話の中にも頻繁に出てくる大流行語となった。
くれない族
TBSテレビ金曜ドラマ スタッフ1984年に放送されたTBSテレビの金曜ドラマ「くれない族の反乱」から生まれた言葉。以前から「誰かが何かをしてくれない」と甘える子供は多くいたが、ドラマは、この「くれない」現象が主婦層まで広がっている実態を描き、その人たちを「くれない族」と呼んだ。社会現象までを含み込んだ風俗語として評価された。
疑惑
『週刊文春』編集部「ロサンゼルスを舞台にM氏が妻を保険金殺人」という大胆な仮説を展開した『週刊文春』のキャンペーン企画『疑惑の銃弾』。この後、メディアは、事件を洪水のように報道し続けた。「疑惑」の文字は氾濫し、一大流行語となった。
千円パック
森永製菓〔株〕この年、怪人21面相が菓子に青酸ソーダを混入し、グリコ・森永など菓子メーカーを脅迫する事件が起きた。この脅迫に対抗するために森永製菓が考え出した、安全のための菓子パック。1200円程度の内容の菓子を完全に包装し、1000円で売った。
す・ご・い・で・す・ネッ
所 ジョージ さん(エンターテイナー)人気番組のフジテレビ「笑っていいとも」で、所が流行らしたギャグ。大したことでもないことで大袈裟に人を誉めるときに用いるが、若者が“場”を盛り上げるために好んで使うようになり流行した。“す”の語にアクセントを置いて話すことがポイントだとか。
教官!
堀 ちえみ さん(歌手)TBSテレビ「スチュワーデス物語」で、主人公・松本千秋(堀)が連発するセリフ。ドジでノロマなスチュワーデス訓練生が教官との師弟愛により奮闘する根性ドラマだが、パロディ風な味つけが人気を得た理由という。若者の間で、人に呼びかける時などに「教官!」とやると大受けした。