第31回〔2014(平成26)年〕

2014 年間大賞
◆ダメよ〜ダメダメ
不思議な世界観のコントを披露する女性お笑いコンビ日本エレキテル連合橋本小雪さんと中野聡子さん
日本エレキテル連合橋本小雪さんと中野聡子さん

戦後も70年を迎えようとしているのに日本人はやっぱり相変わらずの日本人で、NOときっぱり言えないというか、はっきり言わないで済ましましょうという人間関係。いきなり「ダメよ!」とでも言おうものなら、相手は驚いて「号泣」し出さないとも限らない。そんな昨今だからと、そこまで気を使う細やかさが日本人のたしなみなのかどうかは知らないが、ユルい空気ゆえにリベンジポルノがネットに流れたり、公の議会でセクハラやじが横行するのかもしれない。あげくの果てが「壊憲」と言われる7月の閣議決定。「ダメよ〜ダメダメ」と高まる声を前にして、「いいじゃ〜ないの〜」とするすると受け流して、気がついたら憲法が解釈だけで変更されてしまったのだが、この国では、争点をしっかり掲げて投票でハッキリさせようなんて決定方法がありえないんじゃないかと思えて、こりゃあ「号泣」もしたくなる。そんな日本の不条理な現実を、最高にシュールなコントで「大爆笑」に変えてくれたのが「細貝さんと朱美ちゃん」こと、今年一番の人気コンビ、日本エレキテル連合であった。




2014 年間大賞
◆集団的自衛権
受賞者辞退

不法な侵害を受けた国家と密接な関係にある国家が、共同して防衛に当たる権利。この言葉は「しっかりと、丁寧に説明」という表現とセットになって使われた。しかしいくらアベさんに説明されてももう一つはっきりしないままの状況が続いた。集団的自衛権という用語は30数年前の『現代用語の基礎知識』からすでに収録されており、ずっとそれは現憲法下では「違憲」だと紹介されてきた。それが今年、安倍政権の下でいきなり解釈を変更されて、限定容認だが、その行使が可能となったのだから、これは大事件だ。

文化庁の「国語に関する世論調査」で「***的には」は“ぼかし言葉として若者層に広がっている”と指摘されたことがあるが、「集団」と「自衛権」をつなぐ「的」がどこか煙にまくような機能を果たしているのと無関係ではなかろう。




2014 トップテン
◆ありのままで
ディズニー『アナと雪の女王』チーム
塚越 隆行 さん

ディズニー・アニメーション・スタジオによる3Dコンピュータアニメーションのミュージカル映画『アナと雪の女王』が大ヒット。ディズニー映画のお約束、王子様とめでたしめでたしの大団円を裏切る、まさかの女性同士の絆のストーリー。これまでのおとぎ話の世界の殻を破る新しいリアルディズニーに日本の女性たちも完全に心をつかまれた。映画のヒットを助けたのが雪の女王エルサが歌う「Let It Go」、日本語版で「ありのままで」と翻訳された歌を思い切りのよい発声で熱唱する松たか子の歌声だ。そしてエンドロールではMay.Jによる歌だけを聞ける贅沢も。

数年前「肉食女子」の新語が生まれた頃から、すでに女性はありのままだったのでは?という声をよそに、多くの女子たちが、競うようにしてカラオケで「ありの〜ままで〜」を自分応援歌として朗々と歌い上げたのである。

写真はウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン ゼネラルマネージャー 塚越 隆行さん




2014 トップテン
◆カープ女子
野球にあまり興味がなかった女子高生が、熱烈なカープ女子に変貌をとげる漫画『球界ラヴァーズ』の作者石田敦子さん
そして、「カープ女子」神3(スリー)と呼ばれる大井智保子さん、古田ちさこさん、天野恵さん
カープ女子のみなさん

球場まで行って広島東洋カープを応援する女性ファンたち。広島東洋カープはファンクラブに「レディースカープ会員」枠がある。外野自由席が年間20試合無料で観戦できる特典が付き、女子高校生が学校帰りに友だちと応援に来たりできるのだ。カープが女性に向けて行うサービスはこれだけではない。今年5月には関東在住のカープファンの女性を対象に「関東カープ女子野球観戦ツアー」を開催、新幹線代を球団が負担して148名の参加を募った。女子にやさしいサービスを女子はしっかり享受しとことん楽しむ。「広島カープといえども他府県人も拒んでいませんよ」というメッセージをPRできた。

アイドルも地元色を前面に出した地元系アイドルが受ける時代。広島カープで育ち若手として試合で活躍し、FAで他球団に移籍したとしても再び迎え入れるような真の地元密着の、そしてプロ野球界で唯一独立採算経営で気を吐く球団の経営努力を形で見せた言葉でもある。




2014 トップテン
◆壁ドン
映画『L♡DK』
山崎 賢人 さん

壁を背にした一人に対し、向かい合って立つ一人が壁にドンと手をつき顔を接近させるポーズ。壁側に立つ人が女性、もう一人がイケメン男性という組み合わせで、女性憧れのシチュエーションとしてブームとなっている。最初に言い出したといわれるのは声優の新谷良子で、その後、少女漫画『L♡DK』が火をつけた。アイドルグループのイベントでは、アイドルが壁ドンして「君は僕が守るよ」と優しくささやく、といったファンサービスも行われているという。この壁ドン、男性側の強引な感じがよいのだという。

従順な若い男性社員が増殖していることを背景に、現実にはなかなかお目にかかりにくい、強引に引っ張っていってくれる男性像が女子たちの妄想をかきたてたのだ。

写真は映画『L♡DK』俳優 山﨑 賢人 さん




2014 トップテン
◆危険ドラッグ
一般公募で選定された新たな呼称について「国民にしっかり浸透」することで、非常に危険なものだと認識してもらうことを期待すると発言した元国家公安委員長の古屋圭司さん
古屋 圭司 さん

これまで脱法ドラッグ、合法ドラッグ、脱法ハーブなどと称されていた薬物については、簡単に購入出来ることからこれまで問題視されていた。

危険ドラッグに絡み全国の警察が摘発した件数は、2014年上半期で128件。昨年の上半期の倍を上回り、5年前の8件から激増している。今年6月には東京・池袋で脱法ハーブを摂取した男が運転する乗用車が歩道を暴走し1人を死亡、7人に重軽傷を負わせる重大事故を起こし、また大物ミュージシャンが薬物使用で逮捕されるというスキャンダルも衝撃をあたえた。

「合法」や「ハーブ」などの柔らかい名称をまず変更して臨む、警察・厚労省の本気(マジ)度が世間に響き、この言葉は瞬時に浸透した。




2014 トップテン
◆ごきげんよう
山の手言葉「ごきげんよう」を感情豊かな語り口で視聴者の心に印象づけ、明日への活力をもたらしてくれた美輪明宏さん
美輪明宏 さん

NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」でナレーションの美輪明宏が毎回終わりに言う言葉。「梅ちゃん先生」で高視聴率を記録してからNHK朝ドラ人気は続き、「ごちそうさん」の後の「花子とアン」も平均視聴率22.6%を記録した。

お嬢様学校の伝統的なご挨拶としか認識されていなかった「ごきげんよう」だが、安藤はなのモデル村岡花子が東洋英和女学院で学び、溢れるバイタリティーでまっすぐに生きる姿を描いたこのドラマを見た後では、時代を切り開く明治女性の情熱的な言葉に聞こえてくる。花子がNHKの前身の東京放送で「ラジオのおばさん」と親しまれ、子ども向けニュースを読んでいた際、おきまりのフレーズとして用いていた挨拶が「ごきげんよう」。当時そのものまねが全国で大流行したという。




2014 トップテン
◆マタハラ
「働く女性とマタニティ・ハラスメント」の著者、杉浦浩美さん
杉浦浩美 さん

今年10月、妊娠後に降格されたのは男女雇用機会均等法に反するとして損害賠償を求めた訴訟で最高裁が降格は違法で無効との判断を示し、注目を集めた。

セクハラ、パワハラ、アカハラ、家事ハラ、職場はハラスメントだらけである。人間二人以上集まればそこにハラスメントあり、といった様相だ。

妊娠、出産という事情でなくても家事・育児、自身の病気や介護などに時間を充てることもあるだろう。規則に人を合わせるのでなく、現実の人間に合わせたしくみを指向して実践していかないと、働く現場は疲弊し、ハラスメントがますます充満していくばかりだ。

「輝く女性」のためにと提出された女性活躍推進法案はあっけなく廃案となり、残念がる向きもあるが、そもそも国に輝かせてもらおうと思っている女性はいるのだろうか。まずは職場が疲弊したりブラックに染まっていては女性は輝けないだろう。




2014 トップテン
◆妖怪ウォッチ
妖怪ウォッチ クリエイティブプロデューサー/企画・シナリオ原案、日野晃博さん
日野晃博 さん

ニンテンドー3DSのゲームソフト。クロスメディアで漫画、テレビアニメにも展開され大人気となった妖怪ウォッチ。「たまごっち」「ピカチュー」に続く久しぶりの「ち」もの大旋風がきた。

子ども、パパもママもじーちゃんも、ばーちゃんも「ゲーラゲラポーゲーラゲラポー」で盛り上がった1年だった。関連玩具も品薄状態が続き、町の小さなおもちゃ屋さんに大人が訪ねまわるという現象もファミコン以来で、インターネット時代の今も変わらぬ発想がおもしろい。悪いことは全て妖怪のせいにする子どもが増えているという話しも物議をかもしたが、子どもたちの主張もまんざら言い訳だけでもないのだろう。




2014 トップテン
◆レジェンド
スキージャンプ競技におけるレジェンド、葛西紀明さん
ゴルフ界のレジェンド、青木功さん
球界のレジェンド鉄人左腕投手、山本昌広さん
山本昌広さん 青木功さん 葛西紀明さん(代理・土屋ホームスキー部総監督 川本謙さん)

日本人41歳会社員の男が冬季オリンピック・ソチ大会で表彰台に上がった。この男は4年に1度のオリンピックに7回連続出場しているのだという。常に結果が求められ続けるトップアスリートの世界で、ましてや20代で引退することが多いスキージャンプ競技において、けがや環境の変化に揺らぐことなくトップに君臨し続けている葛西紀明を、世界は「レジェンド」と呼ぶ。

そして、日本に「レジェンド」は、まだまだいる。プロになって50年、日本人としてただ一人、米国、日本、欧州、豪州の世界4大ツアーを制覇。2007年には「日本シニアオープン」において、最終日にエージシュートを達成し、逆転優勝を勝ち取り、日本男子初の世界ゴルフ殿堂入りを果たし、今なお72歳にして活躍する青木功さん。さらに、1984年、日大藤沢高から、ドラフト5位で入団。30年間、中日球団一筋で40歳を過ぎてからも、円熟のピッチングで先発投手陣の一角をにない、本年9月49歳で最年長登板、最年長勝利記録を更新する山本昌広さん。まさに、熟年パワー炸裂といったところである。

写真は左から山本昌広さん 青木功さん 葛西紀明さん(代理・土屋ホームスキー部総監督 川本謙さん)

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